本文
生物資源科学部では、多くの大学とは異なり3年4月から卒業論文(卒論)研究に取り組みます。3年生の間は卒論研究に取り組みながら一部の専門科目の講義も履修することになります。研究室での研究活動という究極的なアクティブラーニングを行いながら、専門科目を受講することで視野が広がり、取り組んでいる研究についての理解も深まっていきます。
本連載では、研究室の学生に研究にかかわる専門科目について語っていただいています。
第5回目は、第3クオーターで開講されている「細胞?生体機能学」について齋藤研究室の3年生に語ってもらいました。
細胞?生体機能学は齋藤先生と長尾先生の二人で担当されている講義です。今回は、齋藤先生が担当されている講義前半(1-8回目)の内容について紹介します。講義では、細胞や生体機能に関連した話題を取り上げ、その内容について学ぶと共に、毎回異なるテーマに対して自分自身の考えをまとめたり、グループディスカッションや発表を行ったりします。この講義では、生命科学に関する様々な話題にふれることで知識、視野が広がるだけでなく、自分自身で考える力、チームで意見をまとめる力などが身につくと思います。
私たちが所属する研究室(細胞機能制御学)では、様々なストレスに対する細胞の防御性応答や生体機能の変化を研究しています。細胞のもつ様々な機能を増強、サポートしたり、時には弱めることでストレスなどのダメージから生体を守ったり、がん細胞を攻撃したりすることなどを研究しているのですが、研究室では自分の研究結果を先生や関連テーマの先輩へ報告したり、一緒に議論をすることが必須です。そういった場面で自分の意見をまとめて述べることはまだまだ難しいと感じていますが、この講義では自分で考え、意見を発信すること、他者の意見に耳を傾けることが求められます。自分の意見を発表したり、複数の意見をまとめたり、時には批判的に捉えたりといった経験が、少しずつですが自分の研究活動にも活かしていけるのではないかと思っています。
今回は講義の中でも印象に残っている「バイオミメティクス」の回について紹介します。バイオミメティクスとは、生体模倣、つまり生物の優れた構造や機能などを解析、そこに潜む原理を解明し、新たな技術や製品を生み出す取り組みのことです。身近なところでは、マジックテープやヨーグルトのふたの内側にヨーグルトがくっつかないような仕組みもバイオミメティクスの活用例です。
講義では、先生から「バイオミメティクス」についての説明や様々な実例の紹介などがあった後、3-4人の小グループに分かれ、事前課題であった「生物が持つ能力の中で、我々が活用できたら良いなと思うものは何か?」についてお互いのアイデアを紹介し合うことから始めました。グループメンバーからは、白熊の毛のボアジャケットやノミのたんぱく質の人工心臓弁などいろんなアイデアが出て盛り上がり、生命のもつ巧みな機能や形状のち密さや巧妙さに驚くと共に、それを我々の暮らしに上手く役立てる方法はないかと、グループで話し合いをしながら意見を集約、協力して資料を作り、発表を行いました。各グループから、それぞれユニークな案が発表され、投票により「ハダカデバネズミの特性を利用した、がん予防薬」というアイデアが今回の授業での最優秀プレゼンに選ばれました。
コロナ禍という事もあって互いの距離も気にしながらの対面グループワークでしたが、今まであまり話すことのなかった生命科学コースのメンバーと交流できたり、お互いの新たな一面も知れる良い機会となりました。また、身近で活かされているバイオミメティクスという技術について学ぶことを通じ、自分たちの生活が生命科学とつながり、支えられているのだと強く感じることができました。
(齋藤研究室3年 池田千夏、岩津侑保、勘田佳宏、中村太紀)
授業(グループ発表)の様子