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【生命科学コース】作物の適応に関わる遺伝子の論文を発表(福永教授)

印刷用ページを表示する 2024年5月28日更新

 福永教授の論文が国際誌Genes and Genetic Systemsに早期公開(Advance Online Publication)されました。

Kenji Fukunaga, Akira Abe, Kazue Ito, Kaori Oikawa, Masaya Tsuji, Makoto Kawase

Latitudinal adaptation and dispersal pathway suggested by geographical distribution of transposable elements inserted in the SiPRR37 gene in foxtail millet. (アワのSiPRR37 ​遺伝子へのトランスポゾン挿入の地理的分布のよって明らかになった緯度適応と伝播経路)

Genes and Genetic Systems https://doi.org/10.1266/ggs.24-00023

   作物が野生種から栽培化され世界各地に広がっていくためには様々な形質をかえていかねばなりません。特に南から北へ、北から南へと緯度が異なると開花期や出穂期を変えないと適応していけません。 このような適応にはさまざまな遺伝子が関わっています。本論文では、雑穀の一つアワで2022年の論文で見つかった出穂期に関わる遺伝子のひとつであるPRR37遺伝子についてより詳細な地理的な分布を調査しました。480品種について調査したところ、低緯度地域ではトランスポゾン(TE1)挿入が高い頻度で見られ、南方への品種の拡散にはこの遺伝子の機能低下が重要であることがわかりました。また、新たに短いトランスポゾン(TE2)挿入がこの遺伝子に見つかり東アジアからネパール、西アジアに見られることがわかりました。PRR37遺伝子の機能への影響は定かではありませんが、この地域間の品種の移動がかつてあったことが示唆されました。

 本研究は、県立広島大学の福永研究室と岩手生物工学研究センター、東京農業大学との共同研究として行われました。また、研究成果は部分的に科研費(20K0609823K05279)の助成を受けています。

 

 我々の文明に礎になるのは、1万年から数千年前の農耕の開始ですが、福永研では、作物がどのように野生種からうまれたのか?起源地から広がる過程で環境への適応や人への嗜好性に応じてどのような遺伝子に選抜がかかったのかについて、遺伝学の研究を行っています。過去数千年、われわれはどのようにして環境に対応してきたのか?という問いは、先の見えない環境変動にどのように立ち向かっているのかにもつながってきます。また、本研究でも見つかったようにアワではトランスポゾンによる変異が多く見つかっておりトランスポゾンの研究にも適していることが明らかになってきました。現在解析中の遺伝子でもトランスポゾンによる変異が次々と見つかっています。

 なお、アワの祖先野生種は路傍や空き地に見られるエノコログサですがエノコログサについても研究を行っています。特に、海岸に生えるハマエノコロについて、他大学と共同研究を行っています (Ito, Fukunaga Osako 2024.Local adaptation in parapatric and sympatric mosaic coastal habitats through trait divergence of Setaria viridis. Journal of Ecology 112: 784-799

 

アワの穂の多様性
PRR37遺伝子変異型の地理的分布