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生命科学科の菅裕准教授の研究室では、DNAの配列をコンピュータ上で効率的につなぎ合わせ、より高品質のゲノムDNA配列を作出する方法を開発しました。
成果はDevelopment, Growth and Differentiationのオンライン版に12月25日に掲載されました。
論文中で、大学院前期課程(修士)1年生の傳保聖太郎さんと青野克俊さん、2年生の甲斐隆哲さん、研究室の卒業生矢ヶ崎玲さん(現京都大学理学研究科)、共同研究者のイニャキ?ルイストリリョ博士(スペイン)、研究室主宰者の菅裕博士は、これまで十分に活用されてこなかった次世代シーケンサデータの情報をうまく利用することで、これまでにないアセンブリ(断片化されたDNAをつなげること)手法が開発できると考えました。
その手法をコンピュータプログラムに実装し、研究室で使用するモデル生物カプサスポラのゲノムDNA配列に適用した結果、その品質を大幅に高め、染色体の数を約13本と推定することに成功しました。
2000年のヒトゲノム配列決定以来、ゲノム配列は生物学?医学研究のインフラといっても過言ではありません。本研究では、そのインフラ整備に貢献する成果が得られたといえるでしょう。
菅研究室では、高品質のゲノム配列を基盤とし、研究室のテーマである「動物が多細胞システムを進化させた時、分子レベルでどのようなイノベーションが起きたのか」という謎を解き明かそうとしています。こうした研究はすぐに社会に役立つものではありませんが、思わぬ方向から社会の問題を一足飛びに解決する可能性を秘めていると考えられます。
なお、本研究は文科省の科研費(16K07468)や、県立広島大学重点研究事業の助成を受けて行われました。
菅研究室で使用している、動物に近縁な単細胞生物カプサスポラ。細胞が青く、糸状仮足がマゼンタで染められています。 新しく開発された手法によるカプサスポラゲノムの品質向上の様子。右下は手法の正しさを確認するためのDNAゲル電気泳動図。