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生命科学科の五味教授の研究室では、ドロノキハムシ(コウチュウ目:ハムシ科)の生態について研究しています。このハムシは、幼虫、成虫ともにポプラやヤナギなどの葉を食べます。メス成虫は、これらの食樹の葉の裏側に50個ほどの卵を塊で産みつけます。幼虫は、卵から孵化した直後に同じ卵塊の中の孵化していない卵を食べる「食卵」を行います。つまり、兄弟姉妹にあたる血縁個体を共食いするわけです。このような食卵は、アブラムシを食べる捕食性のテントウムシなどではよく知られている行動ですが、植食性の昆虫ではあまり知られていません。テントウムシでは、食卵した幼虫は食卵しなかった幼虫より生存率が高まるなどのメリットがあることが知られています。そこで、植食性のドロノキハムシで食卵の意義を調べてみると、食卵量に応じて成虫の体重が増加することや孵化幼虫の飢餓耐性が高まることがわかりました。やはり本種でも、食卵には適応的な意義があると考えられます。
卵塊から孵化したドロノキハムシの幼虫。孵化直後にまだ孵化していない卵を食べる食卵行動が見られます。