本文
文化庁の文化財調査官が、庄原キャンパスが関わっている備北漆再興プロジェクトを視察しました。
本プロジェクトは、三次漆生産組合の取り組みに、3年前から庄原キャンパス教員が協力しているものです。ウルシゲノムの完全決定計画を中心に、樹液採取後の廃材利用、樹液の医薬学的な効果の検証など、アカデミアならではの地域貢献を目指しています。環境工学や生命科学といった、幅広い分野の専門家が揃った庄原キャンパスの総合力を生かしたプロジェクトです。
漆は日本の伝統的な塗料として、千年以上にわたり食器などの塗装に使用されてきました。しかし現在、日本で使用される漆の9割以上が中国産となっています。平成27年、文化庁はこれを順次国産に切り替える方針を打ち出しましたが、人手不足が大きな障壁となり、目論見どおりに進んでいるとはいいがたい状況です。
今回の調査では、文化庁の黒坂文化財調査官を三次漆生産組合の武田氏が案内し、耕作放棄地や山林での漆栽培の取り組みを紹介しました。同時に生命科学部の菅准教授が、京都府立大学と共同で行っているゲノムプロジェクトの紹介をはじめ、庄原キャンパスの学生や地元の高校生との協働など、人手不足が叫ばれている漆生産業の復興についても意見を交わしました。
大きく育った漆の樹。あと少しで漆採取が可能となります。採れた漆を宮島の文化財修復に役立てることが目標です。調査には、広島県北で同様に漆植栽に取り組んでいるアサヒの森や、広島県教育委員会、三次市教育委員会の方々も参加し、多方面から興味が寄せられていることが実感されました。
三次市では耕作放棄地がどんどん広がってきており、大きな社会問題となっています。これを利用して漆の苗を育てる取り組みを行っています。視察にも力が入ります。生命環境学部は来年度から生物資源科学部に衣替えされますが、これまでと変わらず、研究力を生かした理系キャンパスならではの地域貢献を行っていきます。それは単なる地域の御用聞きではなく、科学的にも重要度の高い「攻めの地域貢献」です。