<研究室紹介> 「循環する炭素資源」植物から循環型で高機能な新素材をつくる(青柳研究室)
近年,石油由来のプラスチックによる海洋(河川など水域)汚染が問題になっています。その原料の化石資源が枯渇しててきています。現在,プラスチックはほとんどが石油から作られ,一部はリサイクルされていますが多くは燃焼されています。日本国内の廃プラスチック899万トン(2016年)のうちの有効利用率は84%ですが,燃焼され二酸化炭素(CO2)に変換されています。石炭を含め,この化石資源由来のCO2の排出が地球温暖化などの環境問題にかかわっています。石油や石炭は扱いやすくて優れた資源ですが,これらの化石資源に替わる炭素資源は存在するのでしょうか?
私たちの周囲を見渡すと,樹木や雑草,野菜など数多くの植物が目に入ります。樹木からは木材や木質燃料,成分を抽出した「紙パルプ」など様々な製品が作られています。木材は生物の分野のもののように思えますが,改めて化学の目で眺めると,すべて長さが数mmの「植物細胞壁」で構成されており,それらは「セルロース(ブドウ糖からできた高分子)」「ヘミセルロース」「リグニン」という3種類の高分子の微小で複雑な複合体からできています。この構造は草も同様です。非常に強固で条件によっては数千年安定に存在します。しかもそれらはすべて「CO2とH2Oと地球外エネルギー」から光合成で作られています。生命活動を終えた後,ゆっくりと自然の中で分解され自然の中で様々な役割を果たしながらCO2とH2Oに戻っていく循環を行うための化学構造がDNAによって設計されているのです。
この機能はCO2を中心に考えて,「再生産性」「循環性」「多機能性」を示しています。これらの性質を用いて自然由来で、自然に分解され,そのうえ「高機能」な素材を生み出すことができないか?を化学の方法で検討しています。現在石油から作られている高機能材料の一部を,植物構成物質から化学的に合成することに挑戦しています。
現在取り組んでいる内容のキーワードは,耐熱性リグニン材料,リグニン太陽電池,リグニン熱硬化性樹脂,リグニン導電複合体,リグニン樹脂複合体,草本類セルロース複合材料,雑草由来生分解性複合体,地産地消木材系材料,「3000年前の」木材の化学解析(同時に、3000年後の未来予測)などです。
化学,環境,生物,特に木材や草類などについて学び,フィールドでサンプリングし,実験して評価し,世の中の役に立つ材料を作ることを目指しています。
環境適合材料である木材や雑草から,化学の力をつかって,エレクトロニクス材料や光化学太陽電池,高性能プラスチックなどの現在の最先端の材料に関わる素材を設計し,合成し評価する植物と化学の研究を行っています。
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