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明けましておめでとうございます。平成26年の仕事始めにあたり新年のご挨拶を申し上げます。
「元日や手を洗ひをる夕ごころ」 芥川龍之介の句を紹介します。元旦の清新な朝の空気から始まった新しい年の営みをしながらも,時の刻みにより静かに日常回帰する姿を表現した句です。夕方,手を洗いながら厠の前にたたずむ龍之介の姿が想像できます。「今年も始まったのだ」という実感を込めた時に句が生まれたに違いありません。
年があらたまりました平成26年,本学も今日から新たな日常への活動を開始しました。奇しくもこの一年は,3大学統合して10年目にあたります。3つの大学が一つの大学としての形を整えることから始まり,構成員一人一人が,組織の構築,そして教育と研究力の向上に一生懸命努力した9年間であったように思います。またこの9年間本学は,基本理念である「地域に根ざした,県民から信頼される大学」の実践に努めてまいりました。これからもこの理念の遂行を基本とすることにはいささかの揺ぎもありませんが,本年は特にこの理念の具体化において,次の二つに力点を注いで大学運営にあたっていきたいと思っています。
一つはグローバル化社会を意識した教育の質的改革です。ボーダレス社会におきましては,地域や国家に対する伝統や文化,そして異文化に対する理解と共存の姿勢を学びとることが大切です。さらに英語等の外国語習得とともに,自らが国際社会に向かって意見を発信できる,いわゆる口語表現力の育成も求められております。国際社会に立ち向かう総合的な人間力を育てること,そのことがグローバル化教育の定義であると私は確信しています。総合教育センター,教育改革推進委員会,各部局が一体となって,そうした教育の質的改革を着実に前進する一年にしたいと思っています。
さらに,本年9月から庄原キャンパスの生命システム科学専攻では,秋入学とイングリッシュトラック制を併用して海外協定校からの大学院生を迎え入れる準備に取り掛かっております。物理的にも,グローバル化にふさわしい環境を整備して教育することは,これから国際社会に巣立つ学生にとって,非常に意義のあることです。この生命システム科学専攻の教育プログラムが確かなものとして定着し,そして本学の国際化を推進する一つの契機になるように積極的に支援?推進していきたいと思っております。
そしてもう一つの力点は,経営学分野の強化です。大学統合後の9年間,地域との様々な研究協力との関わりの中で,本学の多くの分野に,地域イノベーション力を育てる必要性が認識されるに至りました。例えば,本年度からスタートした中期計画では,農業や医療等の分野における経営人材を養成するための実践的なプログラム提供が唱われ,地域の経営に立脚した高度専門職業人の育成を目的としたMBAの設置を検討するという言葉がしっかりと記されています。
昨年末の学内の審議会で,MBA設置の検討という表現を一歩踏み込み,平成28年4月開設を目途に具体的な行動を開始していくことが決まりました。地域の経営力強化はもとより,私たちの様々な研究成果がマネジメントを添えて地域にしっかりと定着されることへの期待,さらに本学の各専門分野の知識と技術を身につけた学生が,経営マインドを持って次世代のリーダーとして活躍することを思う時,MBAを設けることにより,本学の理念にある「地域から信頼される」という言葉が,より確かなものになると確信しております。実施するには,基本構想の策定,教育課程の編成,委員会の設置や事務組織体制の整備,施設の整備など認可申請に至るまでは多くの課題が予想されます。しかしMBA設置は経営情報学部そして経営情報学専攻に限らず,全学に関わる問題です。全学部,全専攻そして全センターの協力を仰ぎながら,その実現に向けて一歩一歩取り組みながら進んでいく所存です。
新年にあたりまして皆さんへのご挨拶に,本年は特に全学的課題として,グローバル化とMBA設置に向け全力で取り組むことを表明しました。大学の社会的役割として真っ先に挙げられるのは教育です。学生を大切にする姿勢が,本学の教育の底に求められています。こうした気持ちを本学の全構成員が共有しながら,共に歩む平成26年にしていきます。
平成26年1月6日
県立広島大学 学長 中村 健一