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生命システム科学専攻 修了生 柴田敏史さん(第一著者),相沢 慎一名誉教授(責任著者)の研究論文が、Nature Structural & Molecular Biology誌に掲載されました。(以下,画像?図提供:柴田敏史さん)
身の回りには顕微鏡でないと見えないような、大きさ数μm(1μmは1000分の1 mm)の細菌が数多く存在します。それらの多くはべん毛を使って泳ぎ回り、食べ物やすみかを探し生きています。また、べん毛は病原性細菌の感染に重要な役割を果たしています。細菌べん毛は大きく分けて回転モーター、プロペラ、フレキシブルジョイントの3つの部品からなり、まるで人間が作った機械のような構造をしています。
今回、私たちはモーターの回転をプロペラにスムーズに伝える為のフレキシブルジョイントとして機能するべん毛フックの詳細な構造を最先端のクライオ電子顕微鏡を使って明らかにしました。この構造解析により規則的に組み上がった1種類のフック構成タンパク質は構造内で11種の異なる立体構造を協調的にとっていることが判明し、フックがどのように柔軟に形を変えながら力を伝えるか、その謎を解く大きな手がかり示すことができました。
詳細は下記を参照してください。
Nature Structural & Molecular Biology (外部サイトへリンク)
沖縄科学技術大学院大学(OIST)HP関連ページ (外部サイトへリンク)
↑サルモネラ?エンテリカの電子顕微鏡写真
複数のべん毛を持ち、菌体表面から伸びたらせん状のべん毛繊維を回転させて液体中を泳ぐ。
↑細菌べん毛
べん毛フックはフレキシブルジョイントとして機能し、細胞の内側のモーターからの回転力を外側にあるべん毛繊維に伝達します。フックが柔軟に曲がるので菌体は自由自在に運動できます。
2008年に県立広島大学大学院を卒業し、アメリカ留学を経て現在は沖縄科学技術大学院大学で研究しています。細菌べん毛は大学院在籍時の指導教官である相沢慎一先生の研究テーマであり、私もその世界の面白さに引き込まれました。
原始的で小さな細菌は人が作り出した機械よりもはるかに高性能、高効率のナノマシンを持っています。
「どうやって細菌は動くのか?」との単純で奥の深いテーマに引き続き相沢先生と協力して取り組んでいきたいです。
下段左:柴田敏史さん(第1著者)
下段左から3番目:相沢 慎一名誉教授(責任著者)
上段左から2番目:沖縄科学技術大学院大学 マティアス?ウルフ准教授(責任著者)