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香川 弥代
2018年度卒業
公立中学校教諭
私は県立広島大学を卒業してよかったと思っています。一つ目の理由は,英語をさまざまな角度から深く学べたことです。たとえば,言語の成り立ちを学ぶ言語学や,音声がどのように発生し,相手に伝わるのかを学ぶ音声学の立場?観点から英語という言語を学びました。私は,なぜ日本人の英語の発音は下手だといわれるのか,どうしたら日本人は英語の発音が上達するのだろうという疑問から,音声学に興味を持ち,その立場?観点から卒業論文を執筆しました。これを学んだことで,自分の英語の発音が改善されただけでなく,中学校での英語の授業では口の動かし方を含めてうまく発音するコツを教えることができていて,生徒たちは上手に発音するようになっています。
二つ目の理由は,文化を総合的に学べたことです。文化とは,言語や宗教,衣服,食など,人間の精神活動やそれがつくりだしたすべてのものを指しますが,これらは相互に関係し合っていることが学べました。たとえば,英米社会には自身の価値は自分で決める,自分の考えは言葉ではっきり表現する個人主義の傾向がありますが,このことは英語が主語+動詞の構造,言いたいことを端的に伝える構造になっていることと関連があると教わりました。このように文化を総合的に学ぶことで,世界各地の自然環境や人々の価値観をふまえた上で,言語についても深く理解できたと思っています。なぜこのような文の構造なのか,自然的?文化的背景も合わせて説明すると,中学生たちは納得してくれますし,日本とは違う文化をもつ外国に興味をもつようになったりします。私は,なぜ英語を学ぶのか,英語を学ぶとどんなよいことがあるのか,そして言語から見える外国の人々の暮らしや文化などを教えたいと思っているので,県立広島大で学んだことが役立っていると思います。
学生時代には3回の海外留学を経験しました。1年時には,ハワイ大学へ約2週間の留学に行きました。2年時には約1か月,3年時には半年間,それぞれカナダのバンクーバーにあるランガラ大学に留学しました。
2?3年時に留学したランガラ大学では,英語のリーディング,スピーキング,ライティングの授業を聴講したほか,外国人のクラスメイトと一緒のグループでプレゼンテーションを行ったりしました。授業やクラスメイトとの話し合いはすべて英語で行われたので,最初はうまくコミュニケーションができなかったり,慣れない海外生活だったりして,ストレスも感じましたが,それらを乗り越えた経験は私の財産になりました。
ランガラ大学留学時には,カナダ人の家庭にホームステイさせていただきました。そこでは,日本人とは異なるカナダ人の暮らしぶり,カナダ独自の行事や景色,動物に触れることができました。また,バンクーバーは移民が多い都市で,カナダ人に加えて中国人や韓国人,ブラジル人などいろいろな国籍の人が一つの都市に共生している状況は,日本人の私にとって衝撃的でした。異なる文化的背景をもつ複数の国の友人ができたことも,私の大きな財産となりました。
この留学経験を通じて,私は自分の夢を実現したり,目標を達成したりするために自分自身で選択,決断することの大切さを学ぶことができました。そのきっかけ,機会を与えてくれたのが県立広島大学でした。
県立広島大学は,こぢんまりとした分,教員や他の学生との距離が近いという特長があります。同じキャンパスに文化に興味をもつ人,経営や情報に長けた人,健康に関わる人などがいて,相互の交流を通じて,自分の視野を広げることができました。教育学部のない大学で教員免許を取得するのは大変なこともありますが,異なる専門分野を学ぶ学生と交流しながら教員を目指せたことは自分にとって大きかったと思います。
私は2023年度,勤務先の中学校で進路指導を担当しており,自分は何をしたいのか,どんな高校だったら自分のやりたいことができるのか,その高校に進学するために自分の実力は十分なのか,といった悩みを抱える中学3年生と日々向き合っています。高校生の皆さんも,きっと同じ状況ではないかと思います。そうした日々は本当に苦しいですが,必ず自分を成長させてくれるものだと思いますし,「このキャンパスですてきなキャンパスライフを過ごすんだ!」という思いを胸に,受験勉強や課外活動などを頑張ってほしいと思います。しっかり悩んで,後悔しない目標選択,目標を達成するための行動をしてください。