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地域基盤研究機構 高度人工知能プロジェクト研究センター鎌田 真 特命講師が,一般社団法人 情報処理学会北陸支部から招待を受け,学術講演をしました。
日時:2020年1月16日(木)10時30分から12時
場所:福井大学共用講義棟 K310室
内容:構造適応型深層学習の開発と実データへの適用事例
鎌田特命講師は,これまでの研究成果について,事例を踏まえながら80分間,詳細に説明しました。一般に長時間の学術講演は,いくつもの手法や適用事例を用いて説明します。今回の講演では,鎌田特命講師の博士論文の内容をはじめ,学位取得後に進められた研究について紹介がありました。
講演内容の「構造適応型深層学習」の手法は,地域基盤研究機構長高度人工知能プロジェクトセンター長 市村教授が複数の国等の競争的資金を受けて開発した手法ですが,鎌田特命講師は学生の頃からそれらの複数のプロジェクトに加わり,いくつもの課題を解決しながら,博士論文としてまとめたものです。
深層学習としてよく知られている手法は,畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)ですが,開発した方法はCNNとは異なるタイプの深層学習です。図1のように,制限付きボルツマンマシン(RBM)を積み重ねて深層学習を行うDeep Belief Network(DBN)がもとになっています。鎌田特命講師と市村教授は,深層学習を構築するときに課題の一つである,最適なモデルの発見について,学習するデータにあわせて自動でモデルを構築する方法を独自に研究開発しました。構造適応型深層学習の方法により,従来手法より精度の高い学習モデルを自動で構築することに成功しました。(詳細な手法については,下記の論文をご参照ください。)
招待講演では,独自に研究開発した手法を用いて,様々なビッグデータに適用した結果について説明しました。開発した方法の性能比較のために用いられている複数のベンチマークビッグデータへ適用した結果や,「レントゲン画像(CXR8)を用いた癌検出システム」,「コンクリート構造物のひび割れ検出構造物」,「顔感情データ(AffectNet)における主観的認識の違いによる誤検出防止」など,これまでの研究成果について,事例ベースで分かりやすく紹介しました。高精度なシステムを実現している理由について,科学的な説明も行っていました。講演終了後には,質疑応答を受け,今後の深層学習研究につながるような議論が行われておりました。
地域基盤研究機構 高度人工知能プロジェクト研究センターでは,様々な分野で活用できるAI技術をもとに,課題解決にチャレンジしております。共同研究?受託研究のご要望は,地域連携センターまでお問合せください。
鎌田特命講師の講演 | 構造適応型深層学習の説明 |
図1 構造適応型DBNの学習動作 |
なお,本講演で発表した研究開発の一部については,JSPS科研費(課題番号: 19K12142, 19K24365),独立行政法人情報通信研究機構(NICT)の委託研究(課題番号:21405)の助成を受けたものです。
参考文献
[1] 鎌田真,市村匠,"リカレント構造適応型Deep Belief Networkによる時系列データの学習",計測自動制御学会, 54 巻, 8号, pp. 628-639 (2018).
[2] S.Kamada, T.Ichimura, et al., "Adaptive Structure Learning Method of Deep Belief Network using Neuron Generation-Annihilation and Layer Generation", Neural Computing and Applications, Vol.31, pp.8035–8049 (2019) (online 2018).