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生命科学コースの菅教授(分子進化発生学)が共著者となっている「原生生物学事典」が出版されました。
原生生物とは、単細胞の真核生物のことです。細胞一つで成り立つ単純な生き物ですが、バクテリアとは異なり、ヒトに近いタイプの細胞を持っています。一般の方にもなじみ深い種としては、例えばゾウリムシやミドリムシが含まれます。病原性のものも多く、例えばマラリアはプラスモディウムという原生生物がその原因です。例年海産物に被害を与える赤潮は、原生生物の大量発生が原因です。
まだまだ未知の種だらけの原生生物ですが、この事典は、現在知られている分類群を可能な限り網羅し、最新の分子生物学、分子系統学的な知見や、遺伝子の情報も掲載した意欲的なものです。通常の事典と異なり、読み物としても興味を持たれるよう、研究者によるコラムにも力を入れています。というか、コラムが本の大部分を占めており、執筆研究者の思い入れが痛いほど伝わります。
菅教授は「分類と進化:ホロゾア」(動物と、動物に近縁な単細胞生物)の項と、「大進化:オピストコンタにおける多細胞化」のコラムを担当しました。
菅教授の研究室では、動物に近縁な珍しい単細胞生物(単細胞ホロゾア)を研究室で飼育し、これらの遺伝子解析を行うことで、動物の多細胞化がどのようなメカニズムで起きたのかを探ろうとしています。