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福永教授の論文が、日本遺伝学会発行の国際誌Genes and Genetic Systems にOnlineで掲載されました。
Kenji Fukunaga, Meili Zakiyah Nur, Takahiko Inoue, Shin Taketa, Katsuyuki Ichitani
Genes and Genetic Systems: DOI https://doi.org/10.1266/ggs.20-00011
【解説】
われわれが普段利用している作物は、もともとは野生植物を播種?栽培?収穫を繰り返すことにより1万年~数千年前に出来上がったものです。その中で、野生種にあった種子休眠性や脱粒性のような形質を支配するような遺伝子に変異が生じています。それ以外のさまざまな形質に関連する遺伝子も機能を欠失していると考えられます。
今回、着目した遺伝子は、もみで発現するポリフェノール酸化酵素(polyphenol oxidase)遺伝子です。この形質は、ジャポニカイネやオオムギでも栽培型での遺伝子の欠失が知られています。福永教授らは、実験材料としてアワを用いて野生種のエノコログサも含めて遺伝子の系統進化を解析しました。
これまでのInoue et al. (2015)の研究で、世界のアワのポリフェノール酸化酵素(Si7PPO)遺伝子の欠失には1塩基置換による終止コドン型、イントロンへのトランスポゾン挿入型、6塩基重複による2アミノ酸重複型の3つがあり地理的分布が異なることが明らかになっておりましたが、今回はSi7PPO遺伝子の塩基配列を比較し系統樹を描くことにより、Si7PPO遺伝子の機能欠失型は、地理的に異なるSi7PPO遺伝子正常型の品種からうまれたことが明らかになりました。ヒトが栽培?利用するのに不利なるか、あるいは不要になった遺伝子と考えられます。また、さらに野生種であるエノコログサも含めて解析するとアワの起源についても多元起源の可能性も示唆されました。
得られた結果は、中山間地や乾燥地での農業で有望な雑穀遺伝資源の多様性を遺伝子レベルで明らかにしたと同時に、作物の進化や人類と農耕の歴史をさぐる手掛かりを与えてくれるものであると言えます。
本研究は、福永研究室で卒論?修論を書いた井上君の研究成果(Inoue et al. 2015)の続きの研究であり、インドネシアのJember 大学から県立広島大学庄原キャンパスに6カ月留学で来られたMeili Zakiyah Nurさんが部分的に実験をおこなったものです。また、岡山大学資源植物科学研究所の共同利用拠点事業の成果であります。
このように、庄原キャンパスでは、学部学生?留学生とともに、他の大学?研究機関と共同研究を行い国際的な成果をあげています。
図1 福永研で系統保存しているアワ遺伝資源の増殖
図2 論文
関連する福永教授の日本語総説
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分担執筆図書
?『雑穀の自然史-その起源と文化をもとめて』(山口?河瀬編) 北海道大学図書刊行会
2003年
?『地球の処方箋―環境問題の根源に迫る』(総合地球環境学研究所編)昭和堂 2008年
分担翻訳図書
?『農耕起源の人類史』 P. ベルウッド (佐藤?長田監訳) (P. Bellwood, First Farmers: The Origins of Agricultural Societies, 2005) 京都大学学術出版会 2008年
など