本文
ゲノムとは、生物がもつすべての遺伝情報のことです。生物がどのように生まれ、成長するのか、更にはどのように進化していくのかを決定する「生命の設計図」と言えます。
近年、このゲノム情報を使って生物の過去を探ろうとする研究が盛んになっています。様々な生物のゲノムを解読し、それらを比較することで、生物がいつどこで誕生し、どのように世界に広がったか知ることが可能です。驚くべきことに最近、ゲノム情報は、今生きている生物からだけではなく、過去生きていた生物の化石からも得られるようになりました(2022年のノーベル賞を受賞した研究です)。
こうした技術を縄文時代の遺跡に適用すると、縄文人が一体どこからやってきて、どのように広がったのか、またどんなものを食べて、どのような生活をしていたのか、科学的に明らかにすることが可能となります。そうした研究を行っている6名の研究者により、一般向けのわかりやすい本が出版されました。
本書では、生命科学コースの菅教授が、共著者としてコラム「ウルシの過去?現在?未来」を執筆しました。菅研究室では、動物がどのようにして多細胞に進化したかという難問を、単細胞生物を研究することで解き明かそうとしていますが、サイドビジネス(?)として漆のゲノムの研究も行っています。当人は「最近はそのサイドビジネスが思いのほか発展してしまい、もはや何が本業なのかわからない有様だ...」とぼやいているとかいないとか。