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齋藤教授(細胞機能制御学研究室)の論文がMolecular Cellular Biochemistry誌に掲載されました。
Saitoh Y, Yonekura N, Matsuoka D, Matsumoto A.
Mol Cell Biochem. 2022, 477(1):99-104.
doi: 10.1007/s11010-021-04262-7.
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日本語タイトル:ヒト歯肉細胞において分子状水素はPorphyromonas gingivalis由来のLipopolysaccharideが誘導するインターロイキン1α、インターロイキン6の分泌増加を抑制する
【概要】水素(H2)は抗酸化作用や抗炎症作用など多彩な生物学的有効性が報告されており、医療分野への応用をはじめとする様々な研究が行われています。本研究では、水素の抗炎症効果に着目し、口腔内における炎症性疾患の1つである歯周病に対する水素水の効果について検証を試みました。実験では、ヒト歯肉上皮細胞に歯周病原因菌の1つとされるPorphyromonas gingivalis由来のLipopolysaccharide (LPS)を曝露するin vitro歯周病モデルを用い、高濃度の水素を溶存させた培地(水素含有培地)による炎症系サイトカインの発現をELISA法(*)により測定しました。その結果、炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL*)のIL-1αとIL-6がLPSにより大きく増加すること、水素がそれらの増加を有意に抑制する効果を有することが明らかとなりました。本研究から、水素は歯周病における炎症反応に関わるサイトカインとして知られるIL-1αおよびIL-6の産生を抑制することで歯周病の進展?悪化を予防することが期待されることを新たに見出しました。研究は、水素を水溶液中に高濃度溶存させる装置を開発した広島化成株式会社(本社:福山市)の協力のもと、生命科学科の米倉寧々さんが在学中に進め、その成果が今回の発表へとつながりました。このように庄原キャンパスでは、地元企業とも協力しながら課題解決に向けた研究活動も進めており、そのなかで学生自身もたくましく成長していくと考えています。
本研究の一部は、福山市研究開発及び販路開拓支援事業およびJSPS科研費20K11627の支援によって行われました。
<用語説明>
ELISA (Enzyme-Linked Immunosorbent Assay) 法:
試料溶液中に含まれる目的分子を抗原抗体反応と酵素反応を利用して高感度に検出?定量する方法。
インターロイキン:
細胞から分泌される生理活性物質(サイトカイン)の一種。様々な種類が報告されており、インターロイキン1α、インターロイキン6は歯周病における炎症反応に関わるサイトカインとしても知られています。
研究成果のイメージ図