2023年(欧洲杯外围盘口_欧洲杯滚球平台-投注|官网5年)3月 卒業生に送る言葉
タレントtalent
2022年6月某日、次男の通うS幼稚園の運動会に出掛ける。長女も通ったこの幼稚園の運動会では一風変わった競技が行われている。縄跳びである。
子どもたちは、決められた場所で、30秒ほど、自分がそれまで練習してきた跳び方を自由に選んで跳ぶ。一重跳びの子、二重跳びの子、腕を交差させて跳ぶ子、一重跳びと交差跳びを交互にする子、それを二重跳びでする子(ハヤブサ)、後ろ跳び、後ろ二重跳び、後ろハヤブサ…。
この幼稚園の運動会の幾多の種目の中で、私は、この縄跳びを見ることを最も楽しみにしている。誰かと競うのではなく、自分が好きな、自分で選んだ跳び方を、無心に跳ぶ子どもたち。
運動会での縄跳び――この競技はこの幼稚園の教育方針を端的に表している。
S幼稚園はキリスト教主義に基づく「モンテッソーリ教育」を実践している。その教育法の名を、恥ずかしながら私は、長女の幼稚園入学まで意識したことがなかった。五年ほど前だったか、将棋の藤井聡太五冠の通った幼稚園がこの教育法に拠っていたと話題になっていたが、皆さんは聞いたことがあるだろうか。
S幼稚園の子どもたちは、その日、どのように過ごすかを、ある程度、自分で決めることができる。工作をする子、文字や数字などの記号遊びをする子、縫い物をする子、絵や字を書く子、様々であるが、大切なのは、それを「自分で選んでやる」ということである。
キリスト教では、すべての人は神に愛されていて、その人だけに与えられた特別な才能があると考える。それをタレントtalentと言い、特に優れた能力についてはギフテッドgiftedと呼ばれる。モンテッソーリ教育は、このキリスト教の考えを基盤にしている。
運動会での縄跳びも、幼稚園での日々の活動も、神に愛され、それぞれに個性と能力を与えられた子どもたちが、自らのタレントに気付き、生かし、育んでいく、という理念?信念に基づく活動なのである。
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2013年4月に県立広島大学人間文化学部国際文化学科に着任して、丸10年が経過した。今年の卒業生は、コクサイ最後の入学生であった。大学生活の大半をコロナ禍で過ごすことになり、その点、気の毒に思いもするが、少なくとも小川ゼミの4人については、皆、目の覚めるような、学術的価値の高い卒業論文を書き上げた。
卒論のテーマは、kemio、女性の一人称、Twitter、人名(first name)であった。すべて学生自身が自ら選んだテーマである。研究対象に対する愛情に溢れ、熱意や情熱を感じさせ、立派だった。それぞれがそれぞれのタレントを生かし、熱心に取り組んだ結果に相違ない。だから、今回はじめて、全員の卒業論文をまとめて一冊の本にし、卒業式の折に渡すとともに、ゼミの後輩たちにも配ることにした。まさに、コクサイの小川ゼミの有終の美を飾るゼミ生であり、卒論であった。
「大切なのは、各信者が自分自身の道を識別し、神が自分に用意してくださった自分だけのもの、その自分のよさを発揮することであって、求められていないものをまねようとして疲弊することではありません」(『喜びに喜べ: 現代世界における聖性』教皇フランシスコの使徒的勧告、第11項、2018)。神仏の存在を信じる(信じ得る)か、どの宗教を信じる(信じ得る)かは置いておくとして、人は皆、愛され、その人だけの特別な才能を持って生まれてきたということを、私は、コクサイの学生たち、とりわけ今年の小川ゼミの4人の卒業生を見ていて、心から、信じている。
Kさん、Sさん、Hさん、Mさん、ありがとう。皆さんの「先生」にしてもらえて、幸せでした(幸せです)。皆、それぞれのタレントを生かして、愛に溢れた平和な家庭?地域?社会?世界の実現のために、活躍してください。健康第一でね。。